今回ご紹介する作品は「THE DOVE(ダブ)」です。

022ダブ


 「ヨットで世界一周」の冒険記です。原作は単独最年少世界一周を目指した少年の航海記。
「ダブ」というのは、彼の旅の友であるヨットの名前です。
原作の日本語訳は「ダブ号の冒険」という名前で出版されています。寄港先でのカルチャーショックや女性との出会いなど、単なる海洋冒険記に留まらないこの作品は、隠れた逸品と言えると思います。

 主役を演じるのは、ジョセフ・ボトムズ。
兄弟4人が俳優になったボトムズ兄弟の次男坊です。とは言っても、役者として成功したのは長兄のティモシーだけなのは、ちょっと残念なところです。

<夏の風に乗ってセイリング>
 サウンドトラックはジョン・バリーが作曲しています。
今回ご紹介する「The Dove (Main Title)」は、荒れる海と穏やかな海を交互に表現する曲です。
この曲は間違いなくジョン・バリーの最高傑作のひとつです。「ザ・ディープ」ではダイバーが海を漂う雰囲気を見事に再現していますが・・・もう一曲。
ゴールデングローブ賞ノミネートどまりではありますが、リン・ポールが歌う「Sail The Summer Winds」にも触れないわけにはいかないでしょう。彼女の声はまさにこの作品のためにあるかのようです。是非とも作品を鑑賞してご確認下さい。

<デボラ・ラフィン>
 ヒロイン役のデボラ・ラフィンはとても美しい女性でした。
この作品のプロデューサーだったグレゴリー・ペックが、「デボラ・ラフィンを大スターにする」と猛プッシュしていたのですが、映画の出演はあまり多くなく、日本のファンにとっては忘れられた存在に近い女優となってしまいました。
残念ながら彼女は活躍の場をテレビに移したこともあり、映画では作品に恵まれませんでした。
まあ「大スターにする」と豪語していた方が「稀代のイモ役者」と言われていた方でしたので、仕方ないかも知れません(誤解なきように。私はグレゴリー・ペックは好きですよ)。
もっと残念なことに、2012年に彼女は亡くなっています。まだ59歳でした。
Wikipediaに掲載されている彼女の写真には悪意を感じるので、もっと美しい写真http://www.imdb.com/name/nm0706298/ でご覧下さい。

<僕らは逃げていないだろうか?>
 ヨットで世界一周なんて、男であればやってみたいことのひとつでしょう。
この作品の主人公は10代でその旅に出ます。さて、彼は社会に責任のない10代だったから、あるいは家が豊かだったから、この冒険に出られたのか。もしそうならば、僕らも同じ環境にいたら、冒険ができたでしょうか。

 社会人になると、こんな冒険はできないと思う人がほとんどでしょうね。
でも生活に何の心配もなかったとしたら、冒険に出られるでしょうか。
東京都知事を務めた方が、太平洋単独無寄港横断を達成した堀江謙一氏を「無謀」と非難しました。堀江さんはこれに先立つ単独横断でも、日本の当局に「無謀」「密出国」と非難されましたが、単独横断が成功してアメリカで大歓迎を受けると、手のひらを返すように親切にしたそうです。冒険はしないまでも、僕らは前例のない冒険者たちの足を引っ張るような言動(これを嫉妬と言います)は避けたいものです。



<サントラをYouTubeで試聴する>



「ダブ」(1975) The Dove
監督:チャールズ・ジャロット
作曲:ジョン・バリー
出演:ジョセフ・ボトムズ/デボラ・ラフィン