今回ご紹介する作品は「荒野の用心棒」です。

021荒野の用心棒

 日本ではマカロニ・ウエスタン、海外ではスパゲティ・ウエスタンと呼ばれるカテゴリー。
多くはイタリア製の西部劇で、この作品もそれらの初期の作品のひとつです。
監督のセルジオ・レオーネは本作品を含めて2本のスパゲティ・ウエスタンを取り終えたあと、活躍の場をアメリカへ移します。

 邦題が示す通り、あらすじは黒沢明の「用心棒」のパクリです。
「いやー、おおらかな時代だったんだね」と感心された方、間違いです。裁判の結果、東宝サイドへしっかりペナルティを払わされています(笑)。
 パクリ映画ではありますが、クリント・イーストウッドをスターダムにひきあげるきっかけとなったという意味では、映画界への貢献は大きいと言えるでしょう。なによりも能天気で面白い映画です。

<さすらいの口笛〜Titoli>
 スパゲティ・ウエスタンは「なんちゃってウエスタン」であり、いかにもアメリカ製という雰囲気を出すために、監督を含めたスタッフやキャストらは英語の名前を使っています。
本作もその例外でなく、監督のセルジオ・レオーネも作曲のエンニオ・モリコーネも芸名(?)でタイトルバックに表示されます。
2人のコンビの第1作となった本作品ですが、セルジオ・レオーネの他のスパゲティ・ウエスタン(「夕陽のガンマン」「続・荒野の用心棒」)をはじめ、多くの作品でコンビを組んでいます。

 この「Titoli」は口笛の音を目を瞑って聞いて下さい。
荒野の映像が浮かんできます。鞭の音でリズムを取る斬新なスタイルは、それまでの(アメリカ製の)ウエスタンにはありません(多分)。下品と思った良心派もいたと聞いていますが、間違いなく名曲と言えるスコアです。

<スパゲッティ・ウエスタン>
 1960年代に入ると、アメリカ製の西部劇は峠を越し始めました。
映画の中身も少しずつ変化を見せます。「リバティ・バランスを射った男」や「西部開拓史」など、ガンファイトがストーリーの中心ではなくなっていく傾向があらわれます。
スパゲティ・ウエスタンはオーソドックスなウエスタンの手法を取りつつ、主人公の設定に凝るのですが、ジャンルとしての寿命は5年程度(60年代半ば〜70年前後)と短命に終わります。そしてこれと呼応するかのように、アメリカ本国でのウエスタンもフェードアウトしていきます。

 今でも年に何本か細々と製作されるウエスタンですが、ケヴィン・コスナーと並んで中心的な役割を果たしているのがクリント・イーストウッドです。
映画に愛をこめて。

<この映画のDVDはこちらで購入できます>


<サントラをYouTubeで試聴する>



「荒野の用心棒」(1965) A Fistful of Dollars(1 Per Un Pugno Di Dollari )
監督:セルジオ・レオーネ
作曲:エンニオ・モリコーネ
出演:クリント・イーストウッド/ジャン・マリア・ヴォロンテ