【エイガノオト】不朽の名作映画音楽レビューサイト

1960年代~1970年代の作品を中心に、懐かしの名作映画とそのサウンドトラックを紹介しています。

アラン・ドロン

「アラン・ドロンのゾロ」は仮面ライダー世代の琴線に触れる

こんにちは、鳥居遊邦です。

今回ご紹介する作品は「アラン・ドロンのゾロ」です。

025アラン・ドロンのゾロ


 総督に任命されたものの、任地への到着前に殺された友人。
その友人の名前を語り、代わりに赴任して暴れまわるという作品です。舞台設定はスペイン領の新大陸。任地では軍隊が好き勝手、そのせいで農民は困窮しています。
表の顔は無能な総督ですが、もう一つの顔ではこの地に伝わる伝説のキツネ(=ゾロ)となり、剣で悪を切っていきます。

<アラン・ドロンの主演第50作目>
 役者の主演作の数え方というものは決まっていませんが、日本公開時にはチラシや映画紹介番組、新聞の広告にすべて「アラン・ドロン主演第50作記念作品」という宣伝文句が謳われていました。
じゃあ、初主演作品は?と聞かれると「太陽がいっぱい」と答えてしまいがちですが、違います。たぶん1959年に日本で公開された「恋ひとすじに」です。「たぶん」としたのは、出演者ロールの何番目までなら主演と言えるのかという明白なルールがないからです。

<サウンドトラック>
 仏伊合作映画で撮影はスペイン、言語はイタリア語。
まるでマカロニウエスタンですが、作品のテイストもマカロニウエスタン風です。アルバム全般に流れる雰囲気はメキシコっぽいですが、サウンドトラックは英語のタイトルが並び、主題歌「Zorro Is Back」も英語で歌われています。主題歌を歌うオリバ・オニオンズは、サウンドトラックの作曲者兄弟のユニット名です。

 軽快な主題歌は作品中でも何度か使われますが、剣の達人が舞うように戦うシークエンスにはピッタリの曲です。私の周囲でもこの曲を覚えている人は少なくないのですが、日本のCMなどには使われませんね。広告製作者は流行しか知らないから、仕方ないかも知れません。

<意外なインスパイア>
 イリヤ・サルキンドといってもご存知ないと思いますが、映画製作者です。
彼はこの作品を観て、「スーパーマン」の映画化を思いついたとのことです。イリヤ・サルキンドはその前にも「三銃士」「四銃士」を製作しているので、チャンバラが好きなんでしょうね。主役を演じたアラン・ドロンも、かつて主役を演じた「黒いチューリップ」の軽快なチャンバラが心地よかったので、このような作品の出演をリクエストしていたようです。

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<サントラをYouTubeで試聴する>


「アラン・ドロンのゾロ」(1975) Zorro
監督:ドゥッチョ・テッサリ
作曲:グイド&マウリツィオ・デ・アンジェリス
出演:アラン・ドロン/オッタビア・ピッコロ/スタンリー・ベイカー

ギャング映画ではない「暗黒街のふたり」

映画音楽、楽しんでますか。

こんにちは、鳥居遊邦です。
今回ご紹介する作品は「暗黒街のふたり」です。

014暗黒街のふたり


 アラン・ドロンとジャン・ギャバンの最後の共演作となった作品です。そう書くと、ギャング映画のようですが、まったく違う作品です。

 懲役を務めてシャバに戻るアラン・ドロン。保護司のジャン・ギャバンの支援を得て、更生して真面目に生きようと決心する。これを邪魔しようとする昔の悪仲間。更生を信じず、悪仲間の黒幕として刑事から疑われた挙句、再び過ちを犯してしまうアラン・ドロン。

 タイトルは「暗黒街のふたり」ですが、原題を直訳すると「街のふたり」。アラン・ドロンもジャン・ギャバンもギャングではなく、拳銃やマシンガンをぶっ放すこともありません。ただただ寂しく、気持ちのやりどころのない作品です。

<映画にとてもフィットしているテーマ曲>
 物悲しい作品と同様、悲しいメロディの曲です。この作品が公開された1974年4月は、小学5年になったばかり。作品を観る前にこの曲を聞いたときは、あまり好きにはなれませんでした。ところが作品の中では効果的に使われていて、観客のやるせない気持ちを増幅させるのです。

 アラン・ドロンの二度目の過ちのあと、ジャン・ギャバンが急ぎ足で歩くシークエンスでも流れるのですが、もうたまりません。観る前に聴くか、聴いてから観るか(笑)。まずは曲を聴いて下さい。

<映画のあれこれ>
 「シラノ・ド・ベルジュラック」や「グリーンカード」で日本でも知られるジェラール・ドパルデューが、端役で出演しています。昔の悪仲間の一人です。もう40年も経つのに顔が変わっていないことに驚きです。この方、最近はフランスの国籍を捨て、ロシア国籍を取得したことで世間を騒がせました。

 監督のジョゼ・ジョバンニは元ギャングで死刑囚だった人だけに、作品の登場人物たちを描くにはうってつけの映画作家です。彼は主人公とは異なり、恩赦で釈放され、1960〜70年代を中心に多くの作品をこの世に送り出しました。彼は他の作品でもアラン・ドロンを使ってます。それはいずれ。

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<サントラをYouTubeで試聴する>

 

「暗黒街のふたり」(1974) Deux hommes dans la ville
監督:ジョゼ・ジョヴァンニ
作曲:フィリップ・サルド
出演:アラン・ドロン/ジャン・ギャバン/ミムジー・ファーマー